健康基礎知識

子どもの近視は治るの? 気を付けたい近視の進行

 アジア人は近視が多い人種だそうです。日本人も例外ではありません。
 近視が進行すると目が悪いことによる不便さに加えて、大人になって目にいろいろな病気が起こるリスクが高くなると聞けば心配になります。今回は広島赤十字・原爆病院の沖本聡志先生から近視に関するお話を伺いました。

近視について知っていますか
 近年、子どもの近視は増加傾向にあります。文部科学省の調査によると最近の小学生では3人に1人が裸眼視力1.0以下になっています。親世代が子どもだった30年前と比べて視力低下が進んでいます。ライフスタイルの変化の影響などで近視が増えているようです。
【子どもの裸眼視力比較】文部科学省による調査(平成29年学校保健統計)より
 近視が悪化することによる健康上の影響はどのようなものがあるのでしょうか。
「近視は生活環境への体の適応の一つとも言えますが、近視の進行が早かったり程度が強かったりすると、大人になって緑内障、網膜剥離や加齢黄斑変性といった目の病気にかかるリスクが高くなるので注意が必要です。」(沖本先生) 
 強い近視が原因となって起こる目の病気は、失明の原因にもなり得るとのことです。特に、学童期に近視の程度が強い場合には注意が必要だと話されます。

近視のメカニズムと目の構造
 人がモノを見る仕組みは、カメラで写真を撮る仕組みに似ています。外から入ってきた光が角膜と水晶体(カメラのレンズに相当)を通り、網膜(カメラのフィルムに相当)にピントが合っている状態を正視(正常な状態)と言います。近視の人は網膜の手前に焦点が来ており、網膜ではピントがぼけてボンヤリしています。

 乳幼児の目は軽度の遠視(網膜より後ろ側で焦点が合う状態)です。その後、角膜や水晶体(カメラのレンズに相当)の変化と、眼軸(=目の表面から目の奥の網膜までの距離)が伸びることにより、だいたい5~6歳頃までに正視の状態になります。それ以降、学童期になっても眼軸が伸び続けると近視が進行していきます。このような近視を「軸性近視」と言い、学童期にみられる近視の多くは軸性近視です。

近視には軸性近視の他に、水晶体の厚みを調節する筋肉が一時的に緊張した状態が続く「仮性近視」と呼ばれる状態もあります。仮性近視かどうかは眼科で診察を受けないと分かりません。仮性近視であれば筋肉の緊張を和らげる点眼薬を使うことで視力が回復することも期待できます。軸性近視は治りませんが、仮性近視は視力が改善できるタイプの近視です。
【正視のモデル図】焦点が網膜上でピッタリ合った状態です

【軸性近視のモデル図】眼軸が伸びたことにより網膜より手前で焦点が合っている状態です


子どもが近視と判明・・・ どうしたらいい?
 近視の治療としては、見え方を改善するための矯正治療(眼鏡装用やコンタクトレンズ装用)と今後の近視進行を予防する治療に分けられます。

【近視の矯正治療】
矯正治療に関しては、年齢を問わず眼鏡装用が基本です。

(1)まずは度数の合った眼鏡を使うこと
近視の状態ではものを見る距離がだんだん近くなって姿勢も悪くなります。この状態で無理をして見ていると近視はさらに進行してしまうリスクもあります。見えにくい状態を我慢し続けても、あまりメリットはありません。度数の合った眼鏡で矯正することが大切です。

(2)コンタクトレンズの使用は中学生以降で
コンタクトレンズの使用は衛生管理が自分で正しく出来るようになってからが良いとのこと。中学生以降で検討したほうが良さそうです。

(3)レーシックといった角膜を削って近視矯正を行う治療方法は子供には行えません。大人になってから眼鏡をどうしても装用したくない患者さんに行ったりする治療です。費用は高額であることや、他の目の病気を起こした時の治療対応に問題点もあります。

【近視進行予防の方法;生活習慣と治療】
 近視進行に関しては遺伝的な要因と環境的な要因があると言われています。また、それ以外にもまだ分かっていないこともあります。そのため、残念ながら完全に進行を防ぐことは出来ません。しかし、環境的な要素に関しては、少しでも良い生活環境を保つことは誰にでもすぐに始められることです。生活習慣に関する注意点としては以下のことに気を付けましょう。

【近くばかり見ない 遠くを見る】
 近くを見る作業を30分続けたら5分くらい遠くを見て目を休めるようにしましょう。

【正しい姿勢で本を読む 勉強をする】
 正しい姿勢で見るよう心掛けましょう。距離は30センチくらい離すのが目安です。対象物を左右の目から等距離にあるように見ることが大切です。つまり、寝ころんで本を読んだりしていると、片目しか焦点が合っていない状態が続き、近視が進行しやすくなります。

【外遊びをたくさんしましょう】
 自然光(太陽光)は近視進行予防に有効であることがいろいろな報告から分かっています。屋内で近くのものを見る作業を長時間続けないという意味でも、子どもには外遊びが必要なようです。
※注意:太陽光の下で物を見ることは太陽を見つめることではありません。太陽を直接見るのは危険ですので絶対にやめましょう。


近視進行予防の治療方法
 最後に、近視進行予防治療の今後について沖本先生にお聞きしました。
「近視進行を緩やかにする治療法もたくさん研究がされています。治療法としては、特殊眼鏡(累進屈折力レンズ、特殊非球面レンズ)、多焦点ソフトコンタクトレンズ、オルソケラトロジー(就寝時にハードコンタクトレンズ使用)、低濃度アトロピン点眼薬といったものがあります。しかしいずれも日本ではまだ保険で認められた治療方法はありません。さらに、どの治療方法も治療費用や効果の点で一長一短があります。その中で、低濃度アトロピン点眼薬の治療は安全性や進行予防効果で優れていると海外で報告されており、現在日本でも治療研究が進められています。将来は一般の診療で用いられることになるかも知れません」(沖本先生)

<お話いただいた先生>
沖本 聡志(おきもと さとし)
広島赤十字・原爆病院 眼科
広島市中区千田町1丁目9番6号
TEL 082-241-3111(代表)
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